幽閉画家とその友達

 

 

そこは白で囲まれた世界。

 

彼女は出口すらないその部屋から、一歩も出ることができません。

 

気がつけば幽閉されていた彼女は外を知らないのです。知る術もない。

 

全てが白でしかないその世界。

 

ひとつの大きな額縁を除いては、彼女の目に入るものは何もありませんでした。

 

彼女は目の前の大きな額縁に、自ら想像する外の世界を描き始めました。

 

夢中に描く彼女のその姿は、数日経っても変わることはありません。

 

描き終えようとした頃に気づいたのです。額縁からはみ出した線は、いつしか生命とも呼ぶべきものを作り出し、いくつもの感情を産みました。

 

彼女は再び描きました。

 

もう一人ではなかったのです。

 

彼女は、額縁を内に孕んだ、キャンバスとも言うべきその部屋を

 

〝外〟と名付けました。

 

彼女の悲しみを払うのは、きっと彼らに違いありません。

 

軈て彼女は仰ぎ見て気がついたのです。

 

まだ塗っていないところがある。

 

大きな悲しみを知る彼女は、一番優しい色で、しかもとても優しい筆遣いで塗りました。

 

青色に塗られた天井は、若干の塗り残しを寧ろ良いものとし、寒色でありながらも最大の暖かさを持つ存在となりました。

 

そこは優しさ、或いは賑わいで囲まれた世界。

 

彼女は出口すらないその部屋から、一歩も出る気はありません。