2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

朝夜

目が覚めると私は既にベッドの上に座っていた。昨晩は酷く荒れた空模様で、多分、疲れ果てた私は横になることなく眠りについた。目の前に飾られたソープフラワーが何時に無く輝いて見えたのは言うまでも無い。気怠さの中に心地良さを感じる程であったが、視…

舞踏会

ここに太陽は無く空すら無い。ここに光は無く影すら無い。無い。少女は今日も大好きな鼻歌を歌いながら、軽快な足取りでそんな砂場を歩き回った。こちらに助けを求めているような、一枚の大きな写真を見つけた。「あらあら砂塗れじゃない。」少女が砂を払う…

田舎トラックとツキを喰らう鳥

真っ青な空には何もなかった。1本の飛行機雲を除いては。「今日もいい天気だなぁ。」田舎トラックは今日も大きい車体を粗い道に揺らす。仕事を終えた運転手は、顎髭を軽く撫でると頭に巻いたタオルを外して運転席で昼寝を始めた。汚いがそれが美しくもある道…

妖怪は思い出の

誰もいない。見え隠れする月の下で、妖怪は言いました。「俺は恐るべき生き物さ。さあお前は何処行くおチビちゃん。」女の子は妖怪をテディベアを見るような目で見ては手を振って口角を上げました。妖怪は驚き戸惑いましたが、刹那に浮かべたその慌てふため…

酒場脇寒光

[1.居場所]この時間はもう肌寒くなってきて、いよいよ今年も僅かだ。暗くなるのが早いとやっぱり私が必要になるようで、仕事が増える。給料?そんなのはない。ブラックな職場だが、皮肉なことに私は黒を照らさねばならないという役割がある。まぁ夏の時期…

誰かの気まぐれ日記

[1.隣のノッポ]塀にヒョイと飛び乗った僕は黒い毛並みを薄汚く輝かせながらちょこんと座り、隣のノッポに話しかけた。「君は毎日立っていて疲れないのかい?誰も気にすらしてくれないし。」ノッポはいつも立っている。どんなに冷たくても暑くても。人々は…

お姉さんの唄声

[1.明日はねえ]僕は明日ね、学校の皆と遠足に行く。予定だったんだ。でも昨日から熱があるんだよ。下がらなそう。パパとママは治るといいねって言ってくれるけど、こんな調子じゃ多分まだ下がらない。明日皆は動物園に行くんだって。僕は動物さん達に何回…

朝ぼらけの夢物語

[1.日々]「行ってきます。」誰もいない木材で囲まれた空間に私はそう言い、昔からの相棒である自転車に跨った。辺りが日光を漸く受け取る頃、今日も私は意味もなく空気を斬る。周りには森、川、田んぼ、それから…いや、この辺はなんにもない。田んぼ道を走…

嫌われ

[1.お早う]目覚ましの音で俺は目を覚ました。俺は6時半にそいつをセットしたはずだが時計の針は短いほうが7と8の間。長いほうが6。今日は学校だったが、間に合うことはないだろうと思い遅刻して行くことにした。俺はゆっくりと顔を洗う。溜息を零しながら…

アキレ森にて秋を知る

[0.落ちる]ある日、霧の立ち込める森の中、1人の少年が迷い込んだ。冷たい空気をかき分けながら、せっかちな足取りで落ち葉を踏みつけ、更なる深部へと進む。気がつくと開けた広場のような場所に到達していた。中心に大樹が1本。たんぽぽの綿毛が宙を浮か…